Harmonie "Diary" Chromatique

Harmonie Chromatiqueの日記帳です。

著作権の非親告罪化問題

かつての個人blogっぽいネタをこっちに輸入してきます。同人絡みですし、あまりにアレな解釈が出回りすぎているので……。

著作権侵害の非親告罪化って話が盛り上がってます。要はTPPに日本が参加すべきかどうかって話なんですが、同人絡みのtwitterTLを見ていると「これで同人誌執筆するだけで警察にタイーホされる!」って盛り上がってる連中がいまして。
そんなこと、少なくともコミケの大半を占める中小サークルではあり得ませんよ。

なぜかって?そもそも逮捕してよいか、著作権者の意向を聞かないと分からないからです。考えてみましょっか。

世の中にはGPLってものがあります。コンピュータのプログラムを「これこれこういう条件を満たすかぎり自由に使っていいよ」ってルール。たとえばLinuxなんかはGPLのおかげでここまで普及してきました。音屋だとAudacityのお世話になってる人も多いと思いますが、あれを自由に使って自由にダウンロードして良いのもGPLのおかげです。GPLは日本法でも(おそらく)合法的であり、法的効力を持ちます。だから、GPLが適用されているソフトを公式サイトからダウンロードしてくるのは完全に合法であることがわかります。繰り返します。Audacityのダウンロードには一切の違法性がないので、逮捕されません。

では、なんかGPLっぽいけど実は法的に怪しい?ような条項を含む適当なライセンス(XPLとでも名付けましょうか)でソフトXを公開してみます。表面的には「自由に使って良いよ」って言ってますが、XPLは日本で有効かどうか分かりません。なので、作者と利用者の間で「自由に使う」ことの許諾ができているかどうか法的には怪しいです。作者本人はGPLのノリで公開しているとしても、外部から見たら分かりません。ソフトXのダウンロードは違法ですか?逮捕されますか?
確かに外から見たら違法っぽく見えます。だけど、裁判を維持できるわけありません。ソフトXはきわめて怪しい契約のもとに公開されているので、Xの著作権者が許諾「しているか」「していないか」はXPLからは導けません。XPLは法的に無効だとしても、ダウンロードしてる人が別途許諾を受けている可能性を否定できないからです。かくしてXの著作権者を法廷に証人として呼んでみましょう。彼/彼女は言うまでもなく「ソフトXは誰でも自由に使えるものという意識です。ダウンロードは当然許諾しております」と言うでしょうね。それを否定できますか?誰も否定できません。契約は口約束ですら成立するものですから、当事者の間で契約があることに争いがなければ、裁判所が勝手に「証拠がないから契約がないと決めつける」ことはできません。

ということです。世の中の同人作品は、(少なくともオフィシャルとの関係性の意味で)XPLよりもっと怪しげな法的関係で作られています。合法性はきわめつけに怪しいです。では、警察は逮捕できますか?立件できますか?当然、著作権者が権利を(黙示的なものも含めて)許諾しているかどうかを問われるでしょうね。それがわからなければ、逮捕なんかできやしませんよ。著作権者が同人二次創作を認めないことが明確であって処罰すべきケースであることが分からなければ、裁判になって無罪判決が出てしまいかねません。警察/検察はこれを何よりも恐れます。

だから、大多数の同人作品に関しては、これまで通りオフィシャルがちゃんと警察に向けて「処罰してほしい」という意志を示さないかぎり逮捕のような事態は起きません。
親告罪化で起きるのは、以下のようなストーリーです。
・警察が事前に調査を進め、著作権者の判断が得られたらスピーディーに容疑者逮捕まで進めていく:かつては著作権者の告訴がないかぎり表だった調査もできなかったはずで、同人絡み以外の文脈では「警察が著作権者を説得して告訴してもらう」ケースもあったようです。
・海賊版同人誌を作って量産する人が、勝手にひょいひょい捕まる:これは「当たり前」です。パクリですらなく単なるデッドコピーを許す同人作家って普通いないと思いますよ?

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